新聞記事 No.1
   [滴一滴]

 鹿児島県の岩元綾さん(39)は、生後間もなくダウン症と診断された。21番目の染色体が通常より1本多い先天性疾患
である。今年出版した初の詩集には「21番目のやさしさに」と題した作品がある

 <母は1本多い染色体には、やさしさと可能性がいっぱい詰まっていると言う。その言葉は、私の心を救った>。心臓疾患
などを抱えながら小中高校の普通学級に通い、鹿児島女子大(現・志学館大)を卒業した。ダウン症で四年制大学を出
た初めての人である

 そのダウン症かどうかが妊婦の血液で分かる新たな出生前診断が今月、一部の医療機関で試験的に始まる。安易に
広がれば妊娠中絶という選択につながりかねず、医師らから懸念の声が上がっている

 発達の遅れや心疾患を伴うことが多いが、早期から適切な支援を受ければ日常生活の能力が向上することも知られて
いる。だが、子どもを望む多くの夫婦がこうした実情を知らない。検査をするなら、専門家による丁寧な説明など支援態勢
を整えることが急務だ

 「いらない命なんてない」。出生前診断について考えてほしいと岩元さんは全国各地で講演をし、海外では英語でスピー
チもする。自らの可能性を花開かせた命の輝きがまぶしい

 詩集にはこうつづった。「両親には“生んでくれてありがとう”と言いたい」

 読売新聞{2012・3月21日}に紹介
山陽新聞{2012・9月12日}に紹介
南日本新聞{2012・9月19日}−くらし・生活面ーに掲載
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